なので、今TSWの練習はしていない。
しかし、音楽室や合奏室、準備室は開放してるから、そこで勉強したり気分転換に楽器吹いたりしている。
また、準備室では、学習したり、打ち合わせしたりのBGMで様々な音楽を流していることが多い。モーツァルトだったり、ピアソラだったり、兼田敏だったり。
先日聞こえていたのはヘンデルだった。
ピッチ悪いし、なんだかなぁ、下手だなぁ、ヘンデルにしては楽器の編成が変だなぁ。
「水上の音楽」かぁ?「王宮の花火」かぁ?どっちだぁ?と思いながら何となく耳にしていた。
しばらくぼーっと聞こえている状態が続き、
あれ、でもな?
不思議な感じだぞ?
音楽として破綻はしていないぞ?
何処の演奏だろ?
と集中して聞いてみた。
「おや、吹奏楽じゃん」
そのときになって初めて「もしや??」と、気が付いた。
そして、そばにいた人に「それって何処の演奏?」って聞いてみた。
「T高校ですよ」
うぎょ! やっぱり。
自分の演奏だった…。昔の…。
だいたい自分の演奏っていうものは出来ればその直後には聞きたくない。アラばっかり目立って平常心では聞けないからね。すぐ次々飛ばしてしまうか、再生機械を壊したくなる。
それでも自分の勉強で聞かなくてはいけないからとりあえず録音は取る。
以前、バンドがうまくいっていなくて、どうしようもなく下手くそな演奏会をしてしまった、と思ったことがある。やはりその録音を直後に聞く勇気はなかった。しかし、いつものようにその録音を親しい音楽仲間に配ることはした。
すぐにその録音を聞いた感想をいただいた。
「涙が出た。」
「聞いている最中止まらなかった。」
私としては「えっ? そんなに酷いのか」と金槌で殴られたようにショックだった。
「ごめん。変なもの送っちゃったね。」
「いや、違うよ。全く正反対。この演奏は奇跡だと思う。なぜならちゃんと音楽してるから。」
「どんなに達者な演奏でも音楽になっていないことが多い日本の吹奏楽の中で、この演奏は紛れもなく音楽だと思う。」
「確かに拙い技術だけど、その拙い技術でもちゃんと音楽は出来るんだ、という証明が出来ている。だから涙が止まらないんだ。」
というような会話だったと思う。
社交辞令をいう人ではないから文字通りその人の感想だとは思うが。
私としては「そういうものかねぇ」程度でにわかには信じられなかった。
つい最近、月日が経ってようやくその録音を聞き直した事になるわけだ。
過ぎた年月といい、勝手に音が流れてた状況といい、私にとってはほぼ理想的に、自分の演奏を客観的に聞く事が出来た。
確かに下手だった…。音程悪いし…。音外すし…。
しかし単なる音ではなく、音楽だった…。流れに淀みはなかった…。
かつていただいた感想の意味が少し解った気がする。
もっと自信を持とうと思った。
音楽の力は計り知れないのだから。