自分達の演奏が終わり、楽器も積み込んで、一段落つき、ロビーのイスに座ってなんとなくくつろいでいた。
そこを通りかかる人達のなかには、昔からよく知っているがいる。さすが県大会。様々な人が集まってくる。
立ち止まっては挨拶がてら近況報告だったり、演奏の感想だったり。年に一度の再会だね。
しばらくして、入り口のドアに若いカップルの姿を見つけた。
なんとなく目で追っていたら、こちらを向いたので
「しまった。何か知り合いと勘違いさせてしまったかも…」ぐらいに思って、また隣の人と話し込んでいた。
誰かに呼ばれた気がして顔を上げたら、先ほどの2人連れが目の前に立っている。「勘違いだろう」と思っていたことが勘違いだったらしく、私を目指してこちらに歩いてきたみたい。
誰だっけか?
よく見て「あっ!」と気が付いた。
「ひさしぶり〜」
「ここ来たら会えるかな、と思ってたけど会えて良かったです!」
「元気そうだね!」
「こちらはどなた?」
「彼です。今度結婚します。」
「へぇ〜。おめでとう!」
「私、まだ楽器吹いてますよ。」
以前何度か指導に行ったバンドで頑張っていたホルンの彼女だ。
久しぶりに会えたことも嬉しいけれど、まだ楽器を続けていることはもっと嬉しい。
さらに。
「どこかでお会いしたことありましたっけ?」
と彼に聞いてみる。
「はい。国体の頃お世話になりましたよ」
ん?頭の中で急速に記憶が甦りはじめ、「あ、わかった!!!」
彼の出身中学やら国体の音楽隊合同バンドやら、鮮明に思い出した。そうそう、そんな名前だったっけ。
全然別の記憶の中にある2人が、いつのまにかどこかで出会い結びついたのだ。
吹奏楽をやっていたのだから、そうなることはあり得るのだけれど、でも、なんだかとっても嬉しい。
穏やかで、あたたかく、華やかで、とてもお似合いの2人だ。
さらにさらに。
「いま私保育士やっているんですけれど、お世話になっている先輩の保育士が子供に鼓笛教えているんです。○○って言う人なんですけどご存じですか?」
「ははは。良く知ってる知ってる。バンドの教え子だよ。」
吹奏楽で広がっていく世界を実感。
小さいけれど種を植え、芽が出て、それを大切に育て続けている人が確実に存在する。
1つ1つはとっても小さなことだけど、その小さな事の積み重なりがなにより嬉しいと思う。