4月
18
スクラップブック

4月18日付朝日新聞。
ネットに記事がないか随分検索したのだけれど、見つからなかったので一部を写してみる。

  (4月19日 全文転載にしました。)

くらし考
−−−小林研一郎さんと

■障害者との演奏 指揮すると?

できる すごい
魅力的な音生まれそう
自信持ち高み追求

−−−2005年、プロ、アマを問わない「コバケンとその仲間たちオーケストラ」を設立。生のオーケストラ演奏を聴く機会が少ない知的障害の人を招待してきました。

 最後の音が空気に溶けていく瞬間こそが、刹那の頂点です。僕もつい最近まで、知的障害の人に騒がれて静かなところが聞こえなくなる、という不安がありました。でも、実際に音楽の邪魔をすることはほとんどありません。感動の声だけが僕たちに伝わってきます。それはとてもうれしいことです。

−−−活動のきっかけは。

 初めてハンガリーに渡った1974年、何人かが外で聴いていました。まったく体の自由がきかなかったり、ほとんど視力を失ったりした人たちで、そういう声なき人の声が、活動の伏線になりました。指揮者一人では音楽はできません。ボランティアの演奏者が集まるかどうか心配でしたが。実に心ある人たちが集まってくれました。

−−−3月と4月、障害がある人もオーケストラに加わった演奏会を開きました。自閉症の人もいました。

 一緒に演奏するのは不可能に近いと思っていました。最初の一音が本当にあわず、怒鳴ったこともあります。でも、その怒鳴りがききました。本人だけでなく、周りの人たちにも。
 最初のころ、僕が「こうしてね」と言うと、付き添いの親が答えてしまった。それで本人が孤島に流された感じになるんです。突然しゃべり出す人に「今日はそこまで」と言ったら、静かにしてくれました。子どもの能力は想像以上に高い、と意識した親もいるはずです。

−−−求める音は生まれましたか?

 プロのオーケストラでもできない音をやろうとしてきました。ときどき本当にすごい音になります。みんなの心が一つになったからですし、積み重ねの結果ともいえます。あと3年くらいやると、とてつもなく魅力的な音が生まれてくるいう期待があります。

−−−ノーマライゼーションですね。

 人間はだれでも、一人では生きていけない。オーケストラの中に障害のある人が自然と加わり、健常者も障害者も一緒に支えながら一つのことをやるのです。でも、オーケストラ全体の質がかなり高くなければ、やる意味がない。今は05年よりも実に信じられないくらい高みにいっています。

−−−活動を日本中に広げたい。

 私たちと一緒に演奏できるように頑張ってみようと思ってもらいたいです。東京だけでなく、九州や四国、関西にもオーケストラができたらいい。もっと重度の障害の方も参加してほしい。「この一曲だけなら」「この一曲のこの部分だけなら」でいいんです。

−−−今後も続けるのですね。

 以前は心のどこかに「あきらめ」がありましたが。今は高みを追求しなければいけないことがわかりました。「彼らはできる」と自信を持たない限り、僕は指揮をしてはいけない。僕は「彼らはすごい」と思えるようになっています。
(聞き手・由利英明)

言わずと知れた指揮者小林研一郎氏の記事。
すごいなぁ。
素晴らしいなぁ。

信じること。
どこまでも。
決して忘れてはいけない。