ふっと思い出した。(扱っていた曲のメロディーがそこへの連想に繋がったのかな、となんとなく思う。)
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私が高校3年生のこの時期、つまり年末で、年が明けたら作曲科という一般世間からしたらあまりにも異質なところへの受験を控え、音楽への強い思いと大きな不安と訳の判らない焦り…などで、心がもみくちゃになっていた頃のこと。
パシフィック231という曲を知ってからオネゲルという作曲家が好きだった。だから、なけなしの小遣いをはたいてオネゲルのLPレコードを少しずつ集めていて、その中にあったクリスマスカンタータを毎日毎日何度も何度も繰り返し聴いていたのだった。
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その事を思い出して、改めて聴き直してみようと思ったものの、もう既にLPレコードを聴く装置はないしLPそのものもどこに行ったか判らない。
CDを探そうか、どうしようか、少し考えてとりあえずYOUTUBEで検索。
「Une cantate de Noël for Baritone, Children and Mixed Choruses, Organ and Orchestra」
久しぶりに聴いた。もちろん当時聴き続けていた演奏ではないから多少の違和感を感じながらだが、曲の細部とともに当時の気持なども克明に思い出してきた。泣きそうになった。
今になって何故この曲を聴き続けていたのか判る気がする。
聴くのも辛くなるような重く苦しく始まる20数分に及ぶ曲。しかし最後の最後でお馴染みのクリスマスソングが渦を巻き次第に静かに安らいで眠るように終わっていく。
後にこの曲がオネゲルの絶筆作品だと言うことを知る。さらに彼は音楽の将来をずっと悲観していたのだということも。
その最後の最後があまりにも美しいと思うのだ。音楽を、人間を、心より賛美していると感じるのだ。
辛く苦しい現実でも、最後にはきっと希望を見たかったんだろう。至福の幸せを音楽に見いだしたかったのだろう。
聴き直して良かった。
自分自身の音楽の「始まり」を再確認できたように思う。
そして、今もオネゲルを好きなままだった。