6月
17
同じ穴の狢

とある映画をティーンな皆と見ていた。
そこそこの暴力描写や性描写もあるが、その映画を理解するためにはやはりある程度必要だと思うので、特に解説しないでいた。

ある時、そのことにごく一部が異常に反応した。それらのシーンになるとあからさまにいやな顔をし、目をふさいだり耳を覆ったりしている。
この人達にはまだ刺激が強すぎたのかなぁ、と少々反省しつつも、中断することなく観続けた。

終了後、ものすごい勢いで私に攻め寄ってきた。
「あんなのを見せるのは非常識だ!」と正義感の塊のようだった。

「そうか、不快にさせて申し訳なかった。他の人はふつうに見てるし、ストーリーの展開上カットするわけにもかなかったのでね。ところで、もし良かったらいやな理由を聞かせてくれる?」
とお詫びしながらも少し訪ねてみた。
「あんなの見るとむかっ腹が立つ!あんな暴力をするやつ見たら本気で殺したくなる!」
声を荒げ大きな身振りで一気にまくし立てられたのだが、私は「ん?」と返す言葉に少し詰まった。
まじめに正義を突き通そうとしているが、実は自己矛盾を起こしていてしかも自分では気がついていない、と感じたから。

「不愉快だったのは謝る。けれど本気で殺したくなっちゃったら駄目でしょ。あなたがむかっ腹を立てた奴らとあなた自身が同じになってしまうよ。」
と言ったら、なんだか複雑そうな顔して立ち去っていった。

昔々のこと。
批判をしている人が、その本人も同じ穴の狢じゃんか、しかも気がついていないから余計滑稽だ、と感じるときに思い出す話。
最近よくある。