11月
20
漸近線

xy=1という曲線のグラフは双曲線。そして漸近線。
xが限りなく0に近づいていくとyは限りなく増大する。xが0にならない限り決して0にはならない。論理的には無限に増えていく。

しかし実生活で悠長にそれをやっていることは難しい。
どこかで諦めて引き返すか、一歩踏み込みこむか、のどちらかである。

その境界にあるのが「線」だ。

越えるのは簡単だけれど決して越えてはいけない線。
出来れば越えたくない線。
越えたくても決して越えられない線。
必ず越えなければならない線。
科学的に、地理的に、政治的に、感情的に、様々な線があり様々な意味がある。

臨界点…
分水嶺…
38度線…

 
人の屍を踏んで地雷の埋められた国境線を越える。

 そう、国境を越すための手段が1つある。その手段とは自分の前に誰かにそこを通らせることだ。
 手に亜麻布の袋を提げ、真新しい足跡の上を、それから、お父さんのぐったりした体の上を踏んで、ぼくらのうちの一人が、もう一つの国へ去る。(悪童日記 アゴタ・クリストフ/堤茂樹訳−早川書房)

思いきって踏み込むことが出来ずに無限ループに陥る。

 そして、また一切が冒頭から始まり。−−一字一句の変わりもなく、変えようもなく−−また幼ごころの君とさすらい山の古老の出会いで終わると、古老はまたしてもはてしない物語を書き始め語りはじめ…。
(はてしない物語 ミヒャエル・エンデ/上田真而子、佐藤真理子訳−岩波書店)

 

越えるべき線を越えられない人達の塊。
その昔、思いきって地上に降りるか、そのまま木の上に留まるかで、進化は分岐した。