を見た。
しかし、本格的な木曽馬牧場のある開田ではなく、近くの都市公園の動物広場だ。
木曽馬は3頭いて、そのうちの一頭をほとんど手の届くところで見入った。
柵が邪魔でなかなか目を合わすことが出来なかったが、じっとこちらを見ていた。
優しい目をしていた。
疑うことなどまるでない、吸い込まれるような澄んだ目だった。
ことのほか毛並みが美しかった。
しばらくじっとしていたのだけれど、急に駆けだし途中でいななきながら反対側に行ってしまった。
向こう側から飼育員が入ってきたからだった。
白毛のポニーが牧場の斜面にいた。
2頭。
地面にごろんごろんしてた。
せろりも良く芝生でやってたっけな。とにかく上機嫌なときだ。
斜面なのに2頭でじゃれ合いながらかなりの速さでかけっこしてその姿が美しかった。
嬉しくてしょうがない、というように感じた。
動物ふれあい広場にウサギが居る一画があった。
腰くらいの高さの柵で囲まれていた。
「ネザーランドドワーフという品種でピーターラビットの絵のモデルになった」
と説明書きを読みながら観察していたら、三、四歳の男の子がやってきて金網越しに、
「うさぎしゃん、うさぎしゃん、…」とつぶやきながらにこにこしてる。
係のおじさんがすっと登場して
「ウサギ、触ってみようか」
と1羽のウサギを台の上に上げて、その男の子に触れるようにしてくれた。
ウサギはうずくまって、男の子がそぉっと触っても静かにしている。
本当に嬉しそうな顔をして、後ろのお母さんに振り返りながら、それでも
「うさぎしゃん、うさぎしゃん、…」とつぶやきながら撫でている。
お母さんも一緒に撫でながら、男の子の目はまったくもって優しい目だった。
この毛並みを触った感覚、一生忘れないのだろうな。
見ていたら、なんだか涙が出てきた。
少し離れたところに珍しい鶴の檻があった。
2羽いた。水の中のエサをしきりについばんでいた。
驚いたことに檻の中にはラジカセが置いてあってずっと大きな音でラジオがかかっていた。
そうか。
少々見物人が騒々しくてもストレス溜まらないように騒音に慣らすために一日中鳴らしているんだな。
可哀想な気もするけれど、それで慣れたらあんがい大丈夫なのかも知れない。
動物って結構適応能力あるんだ。
烏骨鶏が盛んに鳴いている。
「コケコッコーーー」
音を伸ばした最後にきまって同じ方向に首をかしげてこちらを見る。
「これで良かったですか?」
といちいち聞かれているようだ。
こちらも、同じタイミングで首をかしげられるまで何度もくり返してしまった。
ふふふ。
いくつかの檻の前、たとえば、ベンガルトラとかには、
「老衰のため○月○日に亡くなりました。今までかわいがっていただきありがとうございました。」
と張り紙がしてあった。
このご時世、新しい動物を入れるのは難しいのだなと思いつつ、小さな小さな動物公園だけど、心を込めて動物と関わっているようなそんな気がした。
天気良く、のどかな午後だった。
いろんなことがとってもちっぽけなことに思えてしまうような、暖かい出来事がいくつか重なった。
あれ、ヒトだって動物だよな。
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