6月
02
鯨のソング
海獣の子供 五十嵐大介 / 小学館 IKKI COMIX より
ジム
「何が違ってしまったのか…」
アングラード
「ねえ、ジム。僕とあなたとの違いがわかる?」
ジム
「え…」
アングラード
「 ”言語”なんだ。
僕はごらんの通りおしゃべりだけど、言語のない世界を持っている。
世界を受け止める事認識する事を、言語に因らずにしているんだ。
あのころと同じように…」
ジム
「…」
アングラード
「言語は性能の悪い受像器みたいなもので、
世界の姿を粗すぎたりゆがめたりボヤかして見えにくくしてしまう。
”言語で考える”って事は決められた型に無理に押し込めて、
はみ出した部分は捨ててしまうということなんだ。
鯨のうたや鳥の囀りアザラシの泳ぐ姿のほうが、
ずっと豊かに、世界を表現している。
きっと昔は人類も同じだったはずだよ。」
「海獣の子供」は空と海と琉花のお話。
圧倒される。
特に5巻。ほとんどセリフなしで「本番」時の描写が何ページも続く場面での凄まじい緊張感。
途中で目がクラクラし、ページをめくる手が震えてきた。
まさに、上述したアングラードの言葉そのものだ。
読み終わってずいぶんな衝撃を受けている。
この後すぐ「SARU」「魔女」も読んだ。
やはり「言葉」ではない別のやりかたの認知や伝達をキーポイントの一つにしているように感じる。
もしかしたら「言葉」を信じていないのかも、と思う。