6月
06
喫煙室

移動中、高等学校の校門横にて、雨の中にもかかわらず立ちつくして喫煙している人を見かけた。

いうまでもなく、校内禁煙になってしまったのでしかたなく「校外」に出てちょっと一服、な愛煙家先生だと思われる。

少しだけ同情しつつタバコのことを考えていたら、つと思い出したことがあった。
全く別な時と場所なのだが、喫煙に関する何度も出会った同じような状況のことだ。

そこには喫煙室があった。(施設内禁煙なのだから本来あってはならない部屋。力のある愛煙家の超法規的措置による。本来ならば当然冒頭の状況にならなければならない。いや、それだってあまり見栄えの良い物ではないが…。)
当然、愛煙家は何か理由を見つけてはそこに行ってたばこをくゆらす。
それは全く構わない。私だってかつて自他共に認めるヘビースモーカーだった。タバコを吸いたくなる心境とかタイミングとか喫煙中の雰囲気とかとても理解できる。
はじめは「どうごぞゆっくり」な気持ちでそんな状況を流していた。

しばらく経って、いつの間にか物事のあらましが決まっていたり特定の情報が特定の人達だけに知られていたりすることがあり、それはなんでだろ? と考えていて「そうか?」と思い至った。
組織のトップは愛煙家。愛煙家だから要人というわけではないが、要職に愛煙家は複数いる。有象無象の愛煙家はそれなりに。
「そうか、喫煙室が密談室になっているんだ」

通常、喫煙室はタバコを吸うところ。そしてリラックスするところ。だから愛煙家はそこに集う。
その状況で、様々な話題が出て、その(大概は他愛もない)やりとりがあって、業務に戻っていく。

しかし、時として状況が逆になることがあるのだ。
暗黙の招集がかかり、煙の中で頭をつきあわせながら策を練り、ヤニにまみれて出来上がったそのプランを持って喫煙室から出てくる。

嫌煙家は絶対その部屋に入ってこないだろう。保証付きだ。どうしても急ぎの用事があったらケータイ。
健康を害すると最大敵視している煙った空気、ヤニのにおいの中に自ら入って来るわけがない。
それを良いことにそこにいる人達だけで物事が決まっていく。
「決定」されるわけではないがだいたいの骨子ができあがりその後のシナリオが出来ている。

一番はじめに気がついたときは「フェアじゃない!」と気に入らなかった。
いつどこでそのことを糾弾しようか狙っていたくらいだ。
再度違うところで発見したときには、ああ、まただ。で終わらせてしまったけど。

私がそこに入って行っても咎められることはなくむしろ歓迎されただろうが、休煙(禁煙)はじめたばかりでまだ不安定だった私がその部屋に入ったら、絶対また吸いたくなるに決まってる。
吸いたくなったらまたいつでも吸うぞと(今でも)思っているが、仲間に入りたいがための喫煙再開という愚行はしたくなかった。(する人もいたということだ。そして勘違いが始まる。)

全く同じ状況に何度も出会った。全然別のところでも。別の時間でも。
きっとどこでも状況は同じなんだろうね。人のやることなんだから。

幸か不幸か、私の休煙は途切れることなくまだ続いている。