WIND MESSAGE

by NGO

OLD WIND MESSAGE 4

1994.5.27

NGOがT邦吹奏楽部時代に書いたものを再掲載します

 なぜかこの時期になると復活するWIND MESSAGEである。言いたい事はたくさんあるのに、伝えたい事も山ほどあるのに、なかなか伝えられないもどかしさに我慢できず、苦手なことをやっても伝えたい、伝えなければならないという私の心中を察して心して読んで理解してもらいたい。

 つい最近(合歓のバンドクリニックの時)淀川工業高校演奏を聴いた。聴きながら、聞き終わった後も、次の日もその次の日も、色々なことを考えた。
 同じ高校生で何が違うのか?その違いを出すために何が必要なのか?

 演奏は一言「うまい」。個々の技量も初めはうまいと思った。しかし聴いていくうちにだんだん考えが変わっていった。純粋に技術のことだけを言うとやはり高校生には変わりない。うちのバンドではまだ到達していないが、十分射程距離にはある。しかし仮に技術がそこまで行ったとしても、淀工のような「演奏のうまさ」今の東邦には絶対出来ない。うちのバンドには、うまいと感じさせる(技術以外の)何かが決定的に足りない。いや、足りないどころか全然無い。

 同じ高校生で何が違うのか?という問いに対しては、「うまいと感じさせる何か(技術以外の)」が有るか無いかが違う、という解答になる。その違いで演奏に天と地の差が出来てしまう訳だ。

 それでは「うまいと感じさせる何か(技術以外の)」とは、いったいどんな物か?
 一言で言い表すのはとても難しいが、あえて言うと「自らやり遂げること。またその為の意志の強さ」とでも言おうか。この一言で君達が解ってくれたら何の問題もないのだかそうもいかないだろうから説明をする。
 「自らやり遂げること」には、三つポイントがある。一つは、「自ら」という言葉の意味。もう一つは「何をやる」のか、という事。最後は「やり遂げる」の「遂げる」という意味。
 「自ら」とは、文字通り自分からという意味である。決して「人に言われて」という意味ではない。使命でも義務でもない。自分の本当の気持ちの中から行動を起こすことである。言い換えると本気にならなければ何も始まらないという事になる。「私は本気です」と思う人も本物かどうかもう一度考える必要がある。(もちろんその時には、何が本物なのか、という事が解っていないといけないが。)
 私が見るところでは、この第一段階のポイントをさえクリアしていない東邦吹奏楽部部員が大半である。

 二つ目の「何を」やるのかについて。
 やはり「音楽を」という事になるだろう。しかし一言で音楽といっても奥が深すぎてつかみどころが無い。「音楽」とは文字通り音を楽しむ事であるが、東邦吹奏楽部にとって問題なのは、どのような楽しみ方をしたいのか全然はっきりせず、統一されていない事だ。はじめて楽器を持って音が出た時もとても楽しかったに違いない。また、完璧な演奏をして自分の思う通りの表現が出来た時も、最高に楽しいだろう。しかしその楽しさを味わうためには想像を絶する苦難の道が待っている。

 さて、君達は今どのレベルをめざしているのか?「何を」やろうとしているのか?
 私がやろうとしている事は、言うまでもなく、限りなく完璧を目指す事である。お遊びでなく真剣に私の持てる力のすべてを出し尽くし、もっとすばらしい音楽を自分の物にする事だ。部員諸君にもそれを期待している。
 しかし、残念ながら、完璧な演奏云々…を目指している諸君は皆無に等しい。そんな事は無いと怒る者もいるかも知れない。が、胸に手を当てて良く考えてみてほしい。心の底から真剣に考えているか?考えている事を真剣になって行動しているか?時間を無駄にせず、能率良く一歩一歩着実に前進しているか?
 「お手々つないで仲良し子よし」だけでは音楽は出来ない。足の引っ張り合いになるだけだ。自分以外の人に対して強烈なライバル意識(決して敵意ではない)を持って、お互い真剣に音楽を高め合う事こそ今の東邦吹奏楽部に必要なことだ。(具体的に言おう。練習していないのを見たり聴いたりしたら真剣になって怒れ!練習もせずに吹けない者がいたら真剣に腹を立てろ!たとえそれが誰であろうとも、自分が本当に真剣だったら私がこんな事を言わなくてもそうなるはずだ。逆に言うと、そこでためらうような事があったら、まだ自分が本当に真剣でないと思え!)

 三つ目の「やり遂げる」について。
 最後までやる事。完成させること。目的を達成させること。言葉にすると簡単だ。しかし実際君達はどこまで理解しているのだろう。何を持って最後というのか?どのレベルになったら完成したというのか?果たして何を目的としていたのだろう?
 仮にそこまでの事が解っていたとしても、途中であきらめていないか?最初から出来ないと思いこんでいないか?
 もっとも私が目指している所は、限りなく高く遙か彼方にあるので、そこに行くまでには数知れずの困難が待ち受けているだろうし、想像を絶する試練が待っているだろう。私が生きているうちに目的を達成できるかどうか解らない。しかし、だからといって試練、困難の前で立ち止まってはいけない。前に進み続けなければ、やがて最後にやってくる最高の楽しみがどんどん遠ざかってしまう。お茶を濁したようないい加減な目的ではなく、あくまでも最高の楽しみの為に、これでもか、これでもか、とあきらめる事無くやり続けること、それが「やり遂げる」事につながるのだ。

 そして以上三つの事をする為の強い意志が必要になる。
 東邦吹奏楽部にとって、説明してきた三つのことも全然足らないが、それをする為の「何にも負けない強い意志」が決定的に足りない。全然無い。一つ一つはとても簡単な事なのに、きっちりやろうとすれば出来るはずなのに、なに一つ満足に吹けないことがなんと多いか。それは吹こうとする意志がないからだ。出来ないのではない。やろうとしないのだ。ヘタなのではない。うまくなろうと思わない、うまくなる為のやるべき事をしないだけだ。やっていると思っている人も、実は全然足らない、やっているうちに入らない、という事実を早く悟らなくてはいけない。

 人事では無い。あなた自身の事だ。ここの所ずっと我がバンドが停滞している最大の原因はここにある。同じ高校生なのに、我々が出来ない事を悔しいと思わないか?